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TOP講座「教えてあげる。雑貨屋さんの秘密」講演録(2023年3月26日)

イベントレポート

講座「教えてあげる。雑貨屋さんの秘密」講演録(2023年3月26日)


講演内容の前半「雑貨屋さんの概要」を基に編集再構成しました。

ご参加の皆さんは、今後数年以内に開業したいと計画されている方でなく、雑貨屋さんや雑貨商品の業界、仕事に関心興味があって参加されている方がほとんどですので、入門、導入的な内容でお話ししたいと思います。
主催者様から「日本で唯一の雑貨コンサルタント」とご紹介いただきましたが、実は「雑貨コンサルタント」という名称は私が特許庁にて商標登録をしております(35類)。ですので、私のみが使用できる名称ということです。こんな込み入った肩書きを使う人もいないと思いますが、もし使っている方がいましたら、教えてください。クレームを入れなければなりませんので(笑)。
本日の内容は私の著作「はじめる雑貨屋さん(SBクリエイティブ)」、「雑貨力(ビジネスガイド社)」に書いた内容を基にお話ししています。こちらの小田原駅東口図書館にも蔵書されていますのでより詳しく知りたい方はぜひお読みください。

雑貨とは?雑貨屋さんとは?

「雑多な貨物、細々とした日用品」というのが広辞苑の解説です。しかし、この解説ちょっと乱暴なイメージですよね。皆さんの思っている「雑貨」と印象が違うのではないでしょうか?「細々」と言い切れない結構大きめなサイズのものも雑貨屋さんで販売されていますし、「雑多な貨物」とラフに一括りにしたくない繊細なものを指す場合もありますよね。
広辞苑はもちろん合ってはいるけれど、今の世の中のマーケットや皆さんの気分とは合ってないなと感じられると思います。皆さんが「雑貨っていいなぁ」「雑貨屋さんに興味がある」と思うときの「雑貨」とはどういうもののことなのかをまず考えたいと思います。
乱暴ですが、雑貨とは「おしゃれ」「かわいい」「かっこいい」「おもしろい」「楽しい」「珍しい」など心に良いイメージをうけたり、気分を高揚させてくれるもののこと。それ自体だけでなく、作っている人や場所、時代に興味をそそられる、それを勧めている人(インフルエンサーなど)に憧れているなど、商品自体の魅力に加えて、商品の背景が語れる、ストーリーがある。蘊蓄(うんちく) があるなどの「付加価値」があるはずです。雑貨商品は付加価値が高いものということが言えるでしょうね。話が弾む、自慢できる、自分のセンスを披露できるということでもあります。
さらに言うとプレゼントされたり、プレゼントしたいもの。量販店や100円ショップ、コンビニなどどこでも買えるものを何かのプレゼントにすることは少ないと思いますが、雑貨屋さんで購入したものをプレゼントしたりされたりする機会は多いと思います。「どこでも売ってない」「こだわり」を感じさせるものが多いので「雑貨屋さん」の「雑貨」はギフトにも最適だと思います。
「雑貨」とはそんな高い付加価値のある商品ということ。細々としてない商品や、雑多な貨物と言いたくないような思い入れのある商品までをふくめて「雑貨」と解釈して良いのではないかと思います。

雑貨という言葉

20年ほど前に取材で某有名雑貨企業に問い合わせをしたことがあります。有名「雑貨」企業としての取材であると言うと、広報経由で丁重なお断りがありました。広報いわく「雑貨」という言葉を社長が嫌っているとのこと。ではどんな言葉がいいかと聞くと「ライフスタイル」「グッズ」という言葉がいいと。後から考えるとどうもその頃株式を上場する準備をしているタイミングだったようで、「雑多の貨物。細々とした日用品」という解釈の商品の事業では企業価値を低く評価されることを危惧していたのかなと想像します。
最近も「雑貨」「雑貨屋さん」という言葉をあえて避ける人々がいます。それは「雑貨」「雑貨屋さん」という言葉がちょっと陳腐化しているから。「店員」「従業員」でなくかっこよく「スタッフ」と言い換えるように、誰が見ても雑貨屋さんだけどあえて「ライフスタイルショップ」とか「セレクトショップ」「ギフトショップ」。雑貨じゃなくて「グッズ」「プロダクト」「ギア」などと、雑貨屋さんとしか見えないような店だけれど「雑貨」という(ダサい?)言葉をあえて避けている店や企業もあることは知っておいていただきたいと思います。余談ですが「ライフスタイル」という言葉もいつかは陳腐化するかもしれません。

雑貨の歴史

業界の歴史的なことをお話ししたいと思います。専門学校の講師時代は3コマ数以上でお話していた内容なんですが(笑)、ごく簡単にお話しいたしますね。歴史として知っておいて欲しい企業がサンリオ1960年創業。キャラクター商品を開発販売したことから、皆さんご存知のように今や日本を代表する大企業ですね。当時ビーチサンダルにデザインを施して商品の魅力を向上させて大変売れたとのこと。小物にかわいらしく素敵なデザインを施すと、商品価値が大きく上がりビジネスで成功するという実例ではないかと思います。
プラザ。66年に旧名称ソニープラザとして東京銀座にオープン。頭のソニーがとれて今はプラザという名前ですね。当時はアメリカのドラッグストアがテーマ。私は80年代からのユーザーですが、輸入品を通して欧米のライフスタイル、文化を感じさせてくれました。この2社が「雑貨」「雑貨屋さん」のスタートなのではないかと私は思っています。いやいや、アメリカのティファニーが華やかなギフト文具雑貨店の始祖でしょ。とか、画家の竹久夢二が大正時代にお店(港屋絵草紙店)をやっていたでしょ。などの考えもありますが、現在の皆さんにすっきり理解しやすく、示唆があるのはサンリオとプラザかなと思います。
(東急)ハンズが78年。私が在職していた(西武百貨店)ロフトが87年。83年に無印良品が青山に直営路面店出店。アフタヌーンティーが81年に渋谷のパルコに出店。家具、輸入食器などヨーロッパの「普段使い」の洒落た商品を提案販売するお店でした。家具輸入や鞄を製造していたサザビー(当時社名)という企業が経営しているショップですが、現在、雑貨関連では他にも「フライングタイガーコペンハーゲン」なども国内で運営しています。ちょっと時期はずれますが、92年にフランフランがオープン。家具と雑貨のお店ということでライフスタイル雑貨を販売しています。皆さんご存知の有名店ばかりですが、もしこれからお仕事として「雑貨」「雑貨屋さん」に関わる方でしたら、ぜひ知っておいて欲しいことです。
「私は大きなお店ではなく、個人の小さな雑貨屋さんに興味があるのに」と思う方もいらっしゃるでしょうが、業界の「先輩企業」一種の「ライバル」でもありますので、ご商売をなさるのであれば基礎知識と言うことで知っておいていただきたいですね。
他にも多数知っていただきたい店舗や企業がありますが、どうぞ様々な先輩店舗、企業を研究してください。いずれの店舗も「ちょっと贅沢」「心に潤い」「無駄だけど欲しい」「これを使っている私は素敵」「自慢ができる」「語れる」ような雑貨を販売していることにぜひ注目していただきたいと思います。

雑貨のこれから

簡単にこれまでの歴史的なことをお話ししましたが、今とこれからの雑貨屋さんに関して。まずプチプラ雑貨。プチプラとはご存知のようにプチプライス低単価のこと。ファッションもありますし、雑貨もありますし、化粧品もあります。ダイソー、3COINS等が代表だと思います。100円ショップなどは最近センスアップしてデザイン、ブランディングに熱心ですね。ダイソーの新規ブランドとして「スタンダードプロダクツ」店が2020年にオープンしましたが、ダイソーの経営とは思えない、おしゃれなイメージ作りをしています。他の100円ショップ企業でもかなりセンスアップした商品作り、店づくりをしています。
何が言いたいかというと、雑貨屋さんのライバルなんです。同じ土俵で戦わなければならない場合も多々あるんです。皆さんも普段のお買い物の際に「これなら100均ですませられる」と思うときはありませんか。わざわざあそこの雑貨屋さんに買いに行こうという気分になれない時代かもしれません。ご商売をはじめるのであれば、プチプラ雑貨店とは、違うコンセプト、路線ではじめるべきかもしれません。わざわざ来てもらえるお店にならないといけないんです。


雑貨店mf collection gallery

ハンドメイド雑貨。アクセサリー、縫製の布雑貨、紙製品、焼き物、革製品などを、手作りで制作販売している作家や職人さん。ミンネやクリーマなど作品売買のマーケットプレイス(売買仲介ホームページ)やマルシェイベントの人気、昨今のハンドメイドブームもあり、現在国内で数十万人以上の作家や職人、それらの志望者がいるのではないかと想像しています。雑貨屋さんの商品と言えばハンドメイド作品のことと思っている人も多くいるくらい。「他で買えない」「個性的なもの」「人とかぶらない」「希少価値」なものが買いたいという人も多くいらっしゃいます。作家や職人さんのルックスやお人柄も含めて作品商品を買いたい方が多いのです。
私は20数年前から提唱しているのが、これらハンドメイド作品の雑貨屋さんでの販売。これは多くの場合、店と作家双方の利害が合致しています。手作りですので価格は割高かも知れませんが、これぞプチプラ雑貨ではない雑貨屋さんらしい商品の代表例だと思います。
複合店。「書店」「ファッション店」「美容院」「カフェ」等々、他業種のお店に雑貨商品売場を取り入れる事が多くなりました。当たり前のように「雑貨販売のコーナーを作りたい」「雑貨を売ってみたい」とおっしゃる他業種の経営者の方もいます。雑貨屋さんだけでなく、雑貨「も」販売しているお店にも注目してください。他の業種と雑貨を組み合わせた複合店も参考、ライバルと意識していただきたいと思います。


雑貨店HooNyanBoo

個性とアイディアが大事

個人で店を開きたい、でも資金がない。そんな場合は手間と知恵と時間をかける。アイディアや個性が必要。「面白いね」「気が利いてるね」「洒落てる」と感じてもらえる事が大切。もともと雑貨屋さんは「ニッチ」なビジネス。ニッチとは隙間(産業)のこと。老若男女、万人受けはしないけれど、特定の少数なお客様の強い支持によって成り立っている商売。例えば「猫雑貨」。今は広く大人気ですが、10年20年前はどうだったでしょう。猫柄、猫モチーフの雑貨のみを扱うお店なんて、ニッチマーケットの代表的なビジネスだと思います。もちろんオーナー自身がそのテーマに愛着があることが前提ですが。

お店ビジネスの構成要素


お店と一言で言っても売るものは何?お客さんはどんな人を?どんな店構え? 運営どうしようかな、ネットで情報発信。ネット販売もしたいなどなど、様々な業務、要素があります。お客として店頭で見るスタッフやオーナーのおしゃれで素敵なたたずまいの舞台裏では、事務所で眉間にしわを寄せPCと睨めっこするような業務もありますし、小さなお店でも硬軟取り混ぜやること(仕事)いっぱいです。もちろん大変な事だけでは、こんなに人気の業種になりません。大変さを上回るやりがいや楽しみがたくさんあるご商売です。

ショップアイディア


お店をやりたいと言っている人にまずは「いろんな案を出してみましょう」とお話ししています。こちらはお店の企画に関して発案、整理をしてもらう為のフォームです。先ほどの概念図をフォームにしたものと考えてください。お店と一言で言っても様々な要素が合わさって、一つのビジネスプランとなります。お客様層、場所、商品、店構え等々どれか一つが違っても、お店案としてはガラッと変わってくると思います。ものは試し、まずはこのフォームを使っていただく事をおすすめしています。
どんな人向けに売りたいか。場所はどこに出したいか。商品はどんなものを売りたいか等を書き入れていきます。商品に関しては例えば単なる「食器」ではなく「多治見焼きの若手陶芸家の」「フランスのビンテージの」「昭和のレトロな」などの形容詞や固有名詞が大切です。ほかの項目もいろいろと考えてみてください。思いつき、ちょっと気になる、そういえば……というレベルのアイディアであってもかまいません。小さなサイズで簡単にたくさん書き出す、選抜した案を大きなサイズの枠に詳しく記入されること。こういったフォームを利用して皆さんのお店のアイディアを出してみてください。

人気の愛される雑貨屋さん

今からいろんな雑貨屋さん、雑貨を扱うお店のビデオ、写真をお見せしますが、私が各店の企画や開業計画をサポート、助言した際のポイントも説明します。どこも個性的でユニークなテーマのお店ばかり。もちろんビジネスとしても成功しているお店です。オーナーそれぞれのこだわりや想いも感じてもらえればと思います。どのお店も、開業時や経営してからの苦労やアクシデントが少なからずありますが、それら以上に大きなやりがいを感じて経営しています。
この講座が縁で皆さんがさらに「雑貨」「雑貨屋さん」に関心を持っていただければ幸いです。

店舗紹介


ビデオ:mf collection gallery
(エムエフコレクションギャラリー)
東京都北区



写真: HooNyanBoo
(フーニュンブー)
奈良県奈良市


他雑貨の学校®修了生が経営者や責任者の店舗
プロフィール

富本雅人(とみもとまさと)
日本で唯一の雑貨コンサルタント®。キャリア30年超。雑貨ビジネスコンサルティングと雑貨分野教育のパイオニア。デザイナー、雑貨メーカー商品企画、Loft本部バイヤーを経て、94年より雑貨コンサルティング&プランニング事務所「GROUP ON THE LIVING」を設立。個人経営の小規模な雑貨ショップから大手上場企業までを対象に店舗展開、運営指導やコンサルティング、商品企画、雑貨ビジネスプロデュース他を行う。セミナー、講演実績多数。