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新・東海道水の旅

書影「新・東海道水の旅」

浦瀬 太郎/著
出版社:岩波書店
スタッフによる本の紹介:
東海道新幹線に乗って、旅をしながら東京~新大阪間から見える川や湖の環境をめぐってい
く岩波ジュニア新書の本です。
私たちの住む日本は雨量が多く、水が豊かです。川や湖の水を利用してダムや発電所が建設
され、工業や農業、観光業などが発達してきました。もちろん、上下水道としても利用され
ています。一方、大雨のときの対策も重要で、「雁堤(かりがねづつみ)」や「輪中」とい
ったかつての治水工法は、今でも役に立っているそうです。
小田原の酒匂川や、熱海の温泉のことも書かれています。このうち、熱海~三島間には16年
の歳月をかけて掘られた東海道線の丹那トンネルがあります。丹那トンネルを掘ったことで
交通の便はよくなりましたが、丹那盆地の地下水が流出し、わさび田や水田がもうできなく
なってしまいました。今では水が少なくてもできる酪農が盛んになり、「丹那牛乳」は有名
ブランドとなったわけですが、自然に人間の手を入れたことで、その土地の環境が変わって
しまったということを知っていなければなりません。
水をめぐっていくと、地理から地政学、土木工事や公共事業のあり方、公害問題、産業廃棄
物の処理、下水処理法のテクノロジーなど、さまざまな分野がからみ合っていて、一つの問
題を解決するのにいろいろな立場の人や事業が関わっていることに気づきます。
この本に興味を持った方は旧版の「東海道水の旅」(けやき図書室所蔵)も読んでみてくだ
さい。30年以上前の水の環境と比べてみると人々の意識の変化にも気づくでしょう。近年は
大雨による災害も多く、まだまだ考え続けなければならないことがたくさんあります。それ
ぞれの土地が水とどう付き合ってきたか、社会や理科という分け方でなく、もっと広い視点
から読んでみてください。

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