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ペンギンは空を見上げる

書影「ペンギンは空を見上げる」

著者名:八重野 統摩
出版社:東京創元社
写真:Aaron Rufino Palabyab / Getty Images
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
スタッフによる本の紹介:
読み始めて、これはミステリーなのだろうかと疑い、読み終わって、確かにミステリーだった、と実感する。本書は、そんな変わった趣向の小説だ。

「努力しなければ夢は叶わない。努力だけではどうしようもないことは、世の中にはある」
小学6年生にして、そんな達観した思いを抱える少年ハルが主人公。
クリーニング店の一人息子である彼は、ロケット開発のエンジニアを夢見て、5年生の時から風船ロケットを打ち上げ、今も次回に向けての準備を進めている。
小学生には高額な打ち上げ費用の資金には、物心ついた頃から貯め続けたお年玉と毎月のおこづかいを投入。単純にインターネットで検索をして調べるのはルール違反、できる限り、自分の力だけで作り上げるのが、こだわりだ。
かれこれ5年以上、英語の勉強を続けているのも、将来、宇宙に関わる場所で働くのなら、必須のスキルで、できて当たり前のものだから。
いつか本物のロケットを作りたい、という壮大な目標を掲げ、勉強に励む頑張り屋である。

ある日、ハルのクラスに、金髪の少女イリスが転校生としてやってくる。
仲良くするつもりはない、とクラスメイトを拒絶するイリスと、自主的に孤立していたハル。
家族とぎくしゃくし、クラスでも浮いた存在の2人は、言葉の壁を乗り越えて仲良くなった矢先にケンカしてしまう。
その後、仲直りするためイリスが起こした行動は、周囲を巻き込む騒動に発展!奔走するハルは、家族と向き合ううちに、自分が無意識に張り巡らしていたバリアーに気づく・・・。

物語の最後に、ハルがイリスのために風船ロケットを打ち上げる。
ロケットは、ハルが伝えたかった思いを乗せて宇宙を飛び、2人はある約束を交わす。
彼らが大人になったとき、どうか夢が叶いますように・・・。
頑張る彼らを応援したくなる爽やかなミステリー仕立ての物語。
これから頑張りたい人、すでに頑張りすぎている人、みんなにオススメしたい1冊。

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