出版社:祥伝社
スタッフによる本の紹介:
小田原にもその地区に住んでいる人に受け継がれている祭事や風習、伝統があります。今回ご紹介するのは昭和50年代後半、山と川があり、少し離れているけど太平洋ものぞめる
「谷津流(やつりゅう)」という架空の地方の町が舞台の小説です。
この地区では道路をはさんで北側が古くからの人たちが住む農村地帯、南側が最近新しく開
発された駅周辺のニュータウン地帯に分断されています。小学校は別々にあったのですが、
中学は地区に1校で、中学生となった子どもたちの間にもあつれきが生じます。当然、農村
側は田舎者とあなどられ、ニュータウン側は対立を生ませたと非難されます。
主人公の幸男は地元の祭りを土地開発の大人にバカにされてから、田舎の風習をちょっと恥
ずかしく思い始めています。一方、お祭りで「ヨメゴ」役を務めた桐人はお祭りで歌う歌詞
の意味をニュータウンの子に聞かれて答えられず、祭りを仕切る幸男の祖父にたずねても自
分の頭で考えろ、と教えてもらえなかったため、ずっと気にかけています。
そうした中、夏休みに9人の子どもたちが林間学校に参加します。最初はお互いいがみ合っ
ていましたが、初日の夜に山崩れが起き、生き抜くために一致団結して脱出ルートを探しな
がら山の中を歩きます。そのルートを探す手がかりになったのはお祭りで歌われた歌でした。
昔の人はいろいろなものに意味を重ねていたのですね。なぞかけのような歌詞や祭事のしき
たりなどにも大事な意味があり、それを伝え続けてきたのです。なぜなら、そこで生きてい
くために必要な知恵だから。
今後、この地区がどうなっていくかは描かれません。伝統と革新、相反する二つの共存の道
を見つけられるのは、このような体験をした子どもたちかもしれませんね。
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