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インタビュー

遠山彼方さん


今年の3月に小田原駅東口図書館で講演いただいた、小田原市出身の児童文庫作家 遠山彼方さんに、子どもの頃のお話や図書館の思い出についてうかがいました。

子どもの頃のお話を伺いたいのですが、どんな子どもでしたか?

遠山:親からはずっとまじめ過ぎてつまらないと言われていたのですが、先日小学生時代の友人に会ったら、こういう仕事しているのわかる気がすると言われ、理由を聞いたら「だって楽しませるの好きな子どもだったじゃん」と言われました。例えば、5年生くらいのときに、勝手に学級新聞を作って回覧していました。

すごい活動的ですね!新聞にはどんなことを書いていたんですか?

遠山:学級ニュースだったり、それこそ小説を書いて回したり、四コマ漫画を描いていました。

面白いですね。

遠山:すぐに飽きちゃったんですけどね。その友人とも四コマ漫画などをたくさん描いて冊子にしていました。その時の漫画や、小学生の時に書いた小説のネタ帳は何冊か今も残っています。話がめちゃくちゃすぎてあまり使えないのですが。

ネタ帳にはどんなものが書かれているのですか?

遠山:ミステリーも恋愛も、いろんなジャンルのものが書いてあります。舞妓さんの怪盗とか、突飛な設定が書いてあったり…。何も考えず、ひたすら思い浮かんだものを書いて、1日2~3個お話を書いていたこともあって、数では負けていますね。悔しい。

中学生の頃はどんなことに熱中していましたか?

遠山:今を抜かせば一番小説を書いていました。小学校では漫画のネタ探しや絵を描くことを重点的にやっていましたが、中学校に入ると自分よりも絵がうまい人がたくさんいて、この子たちには敵わないなと思いました。でも、そもそもストーリーを考える方が好きだなと思いはじめ、小学校高学年から中学校では小説を書くようになっていきました。

小学校、中学校で書く物語に変化はありましたか?

遠山:小学校のときは『ちゃお』の読み切りみたいなものを書きたくて、ラブコメ、恋愛ものを、中学校ではミステリーとか書いていました。『名探偵コナン』とか、はやみねかおる先生の作品の影響を受けていたと思います。

高校でも小説は書いていましたか?

遠山:高校は演劇部に入って、興味が小説を書くことから台本作りに変わり、一幕一場のコメディなどを考えていました。

ずっと物語を考えることをしてきたのですね。

遠山:その時々で興味は変わりますが、なんだかんだお話づくりに戻っていきましたね。

現在の作家というお仕事に就かれたのはどうしてですか?

遠山:趣味でお話はたまに書いていたのですが、コロナが流行し当時のお仕事がお休みになって暇だったので、長いお話にチャレンジしてみようと、『渡会くんの放課後恋愛心理学』の元となるお話を書き始めました。小説投稿サイトなら今の時代、子どもにも見てもらえるかなと思い、コンテストに応募してみました。そしたら編集者の方に目を止めてもらえて、作家デビューしました。

作家をお仕事にされて、楽しいこと、辛いこと、それぞれ教えていただけますか?

遠山:筆がのってくると楽しいです。初稿の2~3週間は自分が書きたいことをひたすら書きます。逆につらいのは、「どうだ、おもしろくなったでしょ!!」と自信満々で出したものが、編集の方からボツや赤字だらけで返ってきたときです……。けど、編集さん=最初の読者さんなので、そこでしっくりこなければ別の案を考えます。

自分の創りたいものと、読者が求めていることを想像して寄せていく作業は大変そうですが、それを経て今の遠山さんの作品があるんですね。
それでは、図書館に関するお話を伺いたいのですが、ご出身が小田原ということで、小田原の図書館の思い出はありますか?

遠山:家がお城の図書館とかもめ図書館(現中央図書館)の間にあって、なかなか行かれなかったんですよね。たまに親が連れて行ってくれましたが、どちらかと言えば小学校の図書室の思い出の方が強いです。

どんな図書室でしたか?

遠山:当時の自分からしたら大きく感じました。コバルト文庫があって、恋の本が読みたくてよく借りていました。この前、その図書室に伺ったらイベントなどをたくさんやっていて、親しみやすい感じになっていました。海の目の前の学校だったので、「海を横目に本を読むわたし、ちょっとかっこよくない?」なんて思いながら使っていました(笑)

海が目の前にある図書室、いいですね。中学高校はどうでしたか?

遠山:その頃は返すのが面倒くさかったり、活字離れしていたりもして、2週間で読み切る自信がなくて通えませんでした。高校の図書室に先日伺ったら、面白そうな本がたくさんあって、今なら通いたいなと思います。

図書館・図書室の話に関連して、もし遠山さんが自由に図書館を作れるとしたら、どんな図書館を作りたいですか?

遠山:東口図書館は大人の本に負けないくらい子どもの本もたくさんあって、まさに理想の図書館!……なんですが、強いて言うなら漫画が置いてある図書館を作りたいですね。今の高校の図書室には漫画がたくさん置いてあってびっくりしました。そこの司書さんは、漫画から少しでも紙をめくることを体感してもらいたいとおっしゃっていて。漫画から興味を持つということもあると思うので、そういう図書館を作りたいですね。

読みやすいところから興味を持ってもらうというのは、遠山さんの作品にも通じるところがありますよね。

遠山:そうですね、わたしの原点が小学校1年生のときに読んだ『ドラえもん』の漫画で、そこから歴史や宇宙に興味をもつこともありました。何気なく読んでいたものが「そういえばこういうことだったんだ!」ってつながること、ありますよね。

最後に、小学生や中高生に向けてメッセージをお願いします。

遠山:とにかくその時を楽しんでほしいなと思います。辛いこともあるけれど、どんな経験も常にネタ探しです。あと、辛いことはよく覚えているけれど、楽しいことってすぐに忘れちゃう。だからあえて楽しいことをたくさん探して、わたしは当時四コマ日記を書いていて、それが今でも役に立っている思います。何気なくやっていたことが、その先どのように繋がっていくのかわからないので、その時々で自分が楽しいと思えることは、すごく大事にしてもらいたいなと思います。

プロフィール

遠山彼方
小田原市出身。第3回ポプラ社ピュアラブ小説大賞(ポプラ社主催)を受賞し「渡会くんの放課後恋愛心理学」で2021年に作家デビュー。児童文庫を中心に精力的に執筆中。第12回集英社みらい文庫大賞で大賞受賞、2023年4月~6月 朝日小学生新聞にて『学園ミリオネア 100万円ゲーム』を連載。