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ようこそ!富士山測候所へ

書影「ようこそ!富士山測候所へ」.jpg

長谷川 敦/著
出版社:旬報社
スタッフによる本の紹介:
富士山山頂の剣ヶ峰には富士山測候所があり、気象データを観測しています。
富士山なら眺めがよくて最高だなあなんて思いました?いえいえ、ここは最大
瞬間風速91.0メートルという国内歴代1位の記録を観測し、酸素は平地の3分
の2ほどしかないという、過酷な自然環境にさらされているところなのです。
ではどうしてこのような危険ともいえる場所に測候所があるのでしょう?
それは天気予報の精度を上げるために標高の高いところに観測所を作る必要が
ある、と考えた青年がいたからです。
1895(明治28)年10月、28歳の野中至(のなかいたる)はたった一人で富士
山頂での気象観測に挑んでいきました。結局、体を壊し82日間で観測活動を終
えたのですが、人間だけでなく、当時の観測機器も富士山の過酷な気象条件に
耐えられなかったのです。その後、中央気象台の職員の尽力や高所観測への世
論の高まりもあって、やっと1936(昭和11)年に正式な富士山頂観測所となり、
1年中観測を行えるようになりました。
しかしながら現在、気象庁の職員はそこにはいません。2004(平成16)年10月
1日を最後に無人になりました。機械で自動観測できるようになったからです。
すると測候所の閉鎖に待ったをかける人が現れました。測候所の一部を借りて
観測・研究を続けてきた科学者や学生です。彼らは「富士山頂でしかできない
ことがある」という強い信念を持っていました。その熱意で運営の体制が整え
られ、夏の2か月間だけ測候所に滞在して研究を行えるようになったのです。
厳しい自然環境の中、一筋縄ではいかなかった建物の建設や機材の運搬など、
困難だらけだった富士山測候所。そして閉鎖の危機……。でも実際に、ここで
の観測が地球温暖化や大気汚染、雷、高山病などの研究に活用されていること
を考えると、測候所の存在意義は大いにあるといえます。日本の一番高いとこ
ろでの観測データを基にした研究は、まだまだ進行中。
科学の進歩は、一日にして成らず、です。
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